口内炎をきちんと治すために、症状を見極めましょう。
口内炎には、軽度から重度まで症状により分類され、それぞれ病名がつけられています。
放っておくと危険なものや他の病気が関係していることもありますので、症状や原因を把握して適切な治療やケアをすることが大切です。
口内炎の種類と症状① アフタ性口内炎
もっとも多く見られる口内炎 アフタ性口内炎
口の中の粘膜にできる境界線がはっきりとした小さい腫瘍で、表面が白か黄色の膜で覆われ、周りが赤くなった状態をアフタと称します。
アフタ性口内炎は、アフタが多発し、周辺に粘膜炎を伴っている症状で、比較的一般的な口内炎です。頬の内側や舌、唇の裏や歯ぐきにできやすく、痛みがあり、食べ物がしみます。通常1~2週間程度で自然に治りますが、繰り返しできるものは「再発性アフタ性口内炎」と呼ばれます。
アフタ性口内炎の主な症状
- 白っぽい浅い窪みのある潰瘍
- 痛みを伴う
- 食べ物がしみる
- 傷跡は残らない場合が多い
アフタ性口内炎の主な原因
アフタの発症にはさまざまな原因が考えられていますが、大きな誘因は免疫力の低下と言われています。栄養状態の不良、ストレスや寝不足といった生活習慣の乱れにより、免疫力がダウンするとできやすい状態に。さらに口の中に傷ができ、細菌やウイルスなどが感染することで悪化します。
女性の場合は、ホルモンバランスが乱れ、体力を消耗しやすい生理前や妊娠期にもできやすくなります。またベーチェット病や潰瘍性大腸炎など、全身の疾患が原因となってできる場合もあります。
アフタ性口内炎の予防とケア
つくらないためには、口の中をいつも清潔にしておく習慣が何よりも大切です。食事の後や就寝前の歯磨きはもちろんのこと、1日1回は隅々まで丁寧なブラッシングを心掛けましょう。
ブラッシングには小さく、柔らかめの毛先の歯ブラシを使い、力を入れ過ぎずやさしく磨きます。口内炎ができている場合は炎症部位に刺激が加わらないように注意、歯磨き粉の使用もできるだけ控えましょう。
あわせて疲れやストレスを溜めないことや、ビタミンB群を補給することも予防策のひとつです。
口内炎の種類と症状② カタル性口内炎
主に物理的な刺激によって起こる カタル性口内炎
口の中の粘膜に赤い炎症や斑点、水泡、ひび割れなどの症状がみられる口内炎の一種。炎症が強い場合は表面が白く濁って唾液が粘っこくなり、口臭が気になることも増えます。
刺激の強い食べ物にしみたり、ヒリヒリとした痛みを感じやすくなるのも特徴。腫れにより味覚が鈍ってしまい、食事がおいしくいただけないのもつらい症状です。
また、はっきりと浮腫が目立つというよりも、全体的に赤く腫れて熱を持ち、口の中が荒れた状態になるので、口内炎と気づかない場合も多いようです。
カタル性口内炎の主な症状
- 口の中が赤く腫れる
- 刺激のある食べ物にしみる
- 唾液の分泌量が増える
- 口臭が気になる
カタル性口内炎の主な原因
疲れや免疫力の低下、風邪など、健康状態が心配な場合に発症しやすくなりますが、直接の原因となるのが、物理的な刺激や傷です。入れ歯や矯正器具、熱い食べ物などが粘膜と接触し、刺激を受けた部位に傷ができて細菌が繁殖することが、主な発症原因と考えられています。
虫歯や歯周病、歯槽膿漏などの疾患も引き金に。過度の喫煙やビタミン欠乏、胃腸の調子により、口内の衛生状態が乱れることも原因につながります。
カタル性口内炎の予防とケア
熱いものや刺激物の摂取を控え、抗生物質を含んだ口腔用の軟膏、殺菌錠やトローチなどを使用します。ぬるま湯でうがいをして口腔内を清潔に保つことも効果的なケアの方法です。
入れ歯や矯正器具、虫歯や歯周病が原因と思われる場合は歯科医に相談し、改善していきましょう。疲労や風邪などによる免疫力の低下が誘因と思われる場合は、安静に身体を休めるようにします。
いずれの場合も適切な処置を行なえば、通常は数日で症状が消えます。症状が長引いたり、繰り返し発症する場合は他の重い病気につながることもあるので注意が必要です。
口内炎の種類と症状③ ヘルペス性口内炎
乳幼児に多いウイルス性口内 ヘルペス性口内炎
強い痛みがあり、赤く腫れるヘルペス性口内炎。ヘルペスウイルスへの感染により発症するウイルス性の口内炎です。舌や唇、歯ぐきだけでなく、唇の外側やのどに近い粘膜など、いたるところに現れることがあります。
感染した場合、潜伏期間を経て発疹や高熱、さらにリンパの腫れといった症状も出ます。症状としては高熱が続き、しばらくして小さな水泡(水ぶくれ)が複数でき、赤く腫れて痛みを感じ始めます。水泡が破れると腫瘍ができます。
生後6カ月~3歳くらいの乳幼児にかかりやすく、高熱と痛みを伴いう重い症状になることもあります。口内炎が治った後もヘルペスウイルスは体内に潜伏、大人になってからも疲れや体調不良の場合に再発しやすいとされています。
ヘルペス性口内炎の主な症状
ヘルペス性口内炎の主な原因
ヘルペス性口内炎の原因であるヘルペスウイルスは人から人、モノから人へと感染。再発した大人や感染した子どもからヘルペスウイルスが口の中にうつって発症します。
手をつないだり、子どもにキスするなど直接触れ合ったりする以外にも、たとえばヘルペスウイルスを持つ人が顔や口を拭いたタオル、食事をした食器からも感染。食べかけの食事や飲み物を分けるのも注意です。
一度感染するとウイルスを保持してしまうため、大人になっても、抵抗力などが低下した場合など発症しやすくなります。
ヘルペス性口内炎の予防とケア
ウイルス性の口内炎だけに、治療は医師に任せるのが最善策と言えます。つらい痛みや発熱も投薬によって通常10日ほどで治まります。家庭で気を付けることとしては、刺激の強い食べ物をとらないこと。さらに水分をこまめに補給します。
病院で完治が認められるまでは、家族や他人に感染させてしまう心配があるので、タオルや食器は分けておきたいもの。外出を控え、子どもの場合治るまで幼稚園や学校も休んだ方がいいでしょう。
日頃から身の回りのものを清潔な状態に保ち、人の唾液に触れたりしないように注意するなどの配慮も肝要です。
通常のアフタ性口内炎は自然に消滅しますが、軟膏や貼付剤、スプレータイプの治療薬などを症状に合わせて使用するといった方法があります。歯科医院によっては、部位にレーザーを当てて痛みを取り除く治療を行なっているところもあります。
口内炎の種類と症状④ カンジダ性口内炎
重大な病気を併発している可能性も カンジダ性口内炎
口腔カンジダ症とも呼ばれる感染症で、口の中でカンジダというカビ(真菌)が過剰に増えて発症する口内炎。粘膜上に白い膜ができる「偽膜性カンジダ症」、粘膜の表面が赤くなる「委縮性カンジダ症」、慢性化し粘膜の表面が厚くなる「肥厚性カンジダ症」といった症例があります。
もっとも多く見られるのは偽膜性カンジダ症です。偽膜性カンジダ症は白い苔のようなものが頬の内側や口蓋(口の中の天井部分)、舌などに点状や線状、または斑紋状に付着し、はがすと赤く腫れたり出血したりします。放置すると口全体に広がっていきます。大人だけでなく、乳幼児にも発症。口の中の違和感や舌のしびれ、味覚の異常を感じる場合もあります。
カンジダ性口内炎の主な症状
- 白い苔のようなものが付着
- 痛みはほとんどない
- 炎症を起こしたり痛みを伴うなど症状が変化する場合もある
カンジダ性口内炎の主な原因
カンジダというカビ(真菌)は、もともと自分の口の中に存在している常在菌のひとつです。
したがってカンジダ性口内炎は外部から感染するのではなく、口内で過剰に繁殖することによって発症。健康な状態にある人が発症することはあまりなく、糖尿病や血液の疾患、ガンなど他の病気を患っていたり、乳幼児や高齢者、妊婦など体力や抵抗力が弱い場合にかかることがあります。
また、ステロイド剤や抗生物質を長期間にわたって服用することによって口内の常在菌のバランスが崩れ、菌交代現象を起こすことで発症する場合もあります。
カンジダ性口内炎の予防とケア
真菌であるカンジダ菌の増殖が原因であることから、病院での治療には抗真菌剤が処方されます。
ただ健康な場合は発症しにくいカンジダ性口内炎は、重大な病気が隠れている場合もあります。心当たりのある持病などがあるなら、すぐにでもあわせて治療を。また、常備薬などについても医師に相談して、容量や使用法についての指示を受けてください。
加齢などが原因で口の中が乾燥していると粘膜が傷つきやすくなり口内環境が悪化。カンジダ菌が増殖しやすくなります。こまめに水分を補給するとともに、栄養バランスにも気を配り、健やかな状態を保つことを心掛けたいものです。
口内炎の種類と症状⑤ ニコチン性口内炎
ヘビースモーカーは要注意 ニコチン性口内炎
タバコが原因となって起こる口内炎。ヘビースモーカーをはじめ、日常的に喫煙している人は注意が必要です。
長期に渡り喫煙を続けるうちに、口の中の粘膜の特に上の部分に赤く発疹ができた後、だんだん白っぽく、分厚くなるため口蓋ニコチン性白色角化症とも呼ばれます。痛みは強くないものの、食べ物がしみることがあります。
喫煙が健康を脅かすことはもう常識ですが、近年ではニコチン性口内炎がガンに進行する危険性も指摘。からだのためにも、やはり本数を減らしたり、禁煙が望ましいでしょう。
ニコチン性口内炎の主な症状
- 口蓋粘膜が異常に厚く硬くなる
- 自覚症状はほとんどない場合が多い
- 時に炎症部分が痛んだり、食べ物や飲み物がしみることもある
ニコチン性口内炎の主な原因
その名の通り原因は「喫煙」です。ただしニコチンのみが直接の原因かはまだはっきりとしておらず、タバコの煙に含まれるさまざまな化学物質の影響や熱気を吸い込むたびに起こる軽い火傷の状態が口内炎の発症に関係しているとされています。
またタバコの吸気の熱は口の中を乾燥させ、口内炎をつくりやすい状態になっています。口内が不衛生になったり、喫煙がビタミンを消費することも原因のひとつ。長期的にこの状態が繰り返されることがニコチン性口内炎を発症させる原因と言えるでしょう。
ニコチン性口内炎の予防とケア
まずは禁煙をすること。タバコを遠ざけても改善までには数週間から数カ月かかることもありますが、あせらずに禁煙を続けましょう。
タバコがやめられないという方はせめて、本数を減らしてください。禁煙クリニックなどに相談するのも方法です。
長年の喫煙により、口の中には有害物質が蓄積されたり、乾燥が進んで口内炎ができやすくなっています。歯みがきやうがいの回数を増やすなど、粘膜の有害物質を落としやすくして、衛生的な口内環境を維持することをおすすめします。