セラミドのおはなし

4.セラミド発見!

みずみずしい潤い肌の決め手となる成分!「セラミド」についてのおはなし。

  • セラミド
img_ceramide04_01
  • facebook
  • twitter
  • line
  • mixi
  • hatena

index 目次

医学博士 芋川 玄爾 先生

監修:中部大学・生物機能開発研究所 客員教授

医学博士 芋川 玄爾 先生

(セラミド研究会顧問)

潤い補給常識を大きく変えたセラミド発見ストーリー。

今や肌の潤いのために重要な成分として知られているセラミド。もともと肌に存在している物質ですが、発見され、「角層細胞間脂質」と名付けられたのは1985年のこと。セラミドの発見と機能の解明は、それまでの潤い補給の常識と今日の私たちの美容習慣を変えることになったのです。

偶然と疑問の追究から、セラミドの発見へ。

セラミドの保湿メカニズムの発見のきっかけとなったのは、皮脂を採取する実験での出来事。ある被験者の皮膚をアセトン・エーテルの溶媒で、間違って通常よりも長い時間処理してしまいました。

すると、その被験者の肌は乾燥してひどい肌荒れがおきてしまいました。お風呂に入っても、クリームをつけても、1週間後でも回復しない現象に、ある疑問が…。

石鹸洗浄やお湯での処理では、沢山のアミノ酸が溶出し肌が乾燥するため、それまでは肌の潤いを守っているのは天然保湿因子(NMF)と考えられていましたが、アセトン・エーテル処理では、アミノ酸などの天然保湿因子(NMF)は全く溶出されていませんでした。アミノ酸は皮膚に残ったままのはず。それなのに、この肌荒れはなぜ起こったのか、大きなナゾでした。

当時としてはまったく不可解で不思議なこの現象を見逃さなかったことが、「角層細胞間脂質」セラミドの水分保持機能の発見につながるのです。

肌の乾燥の原因は、セラミドの流出と判明。

潤いを守るとされているはずの天然保湿因子(NMF)は肌に残っているはずなのに、なぜ肌荒れを起こしたのか。

疑問を解明するために皮膚から抽出した成分を細かく分析。やはり、その中には、アミノ酸などの天然保湿因子(NMF)はまったく認められませんでした。

代わりに見つかったのが、セラミドを主体とした脂質。ひどい肌の乾燥をおこした皮膚では大量に流出していることが判明したのです。

そこで、被験者の皮膚に溶出したセラミドを塗布し肌に戻してみると、乾燥状態が改善。天然保湿因子(NMF)よりも角層細胞間脂質のセラミドが保湿に関する重要な働きをしているのでは、という仮説に行き当たったのです。

img_ceramide04_02

1985年に名付けられた、角層細胞間脂質。

セラミドを主体とした脂質が肌の潤いに関係していることは予測されたものの、皮膚のどこに存在しているのか。

そもそも角層に脂質が存在しているかいないのかは、研究者の間でも長年の論争にもなっていましたが、セラミドなどの脂質が、特殊な染色法により角層の細胞と細胞の間に存在していることが確認されました。

このことが明確となり、長年の論争にも決着がつくことに。そして、この脂質を「角層細胞間脂質」と名付けたのが1985年のことです。

セラミドがつくる液晶の構造「ラメラ構造」と結合水。

セラミドが皮膚から取り除かれると水分量が低下して、肌荒れを起こす。逆にセラミドを皮膚に戻すと肌荒れが改善する。セラミドに乾燥に抵抗する水分保持機能/保湿機能があることはわかっていても、そのメカニズムは不明でした。

研究を重ねる中で、セラミドのもつ物理学的性質が、これまで知られていなかった水分保持機能/保湿機構を担っていることが発見されたのです。

セラミドは、水と仲よくできる部分(親水基)と脂と仲よくできる部分(疎水基)の両方を備えた物質です。角層の細胞の間で、水分子をしっかりとつかまえる一方で、セラミド同士が仲よくつながって一定の方向を向きながら整列することで、水と脂(セラミド)が交互に層状に並ぶ液晶の構造「ラメラ構造」をつくっていることがわかったのです。

水と脂の層がきれいに並んだラメラ構造の中に抱え込まれている水分は-40℃でも凍らない結合水で極度の乾燥状態でも蒸発しない水分であることも判明しました。

セラミドなどがつくるラメラ構造がきちんと整っていることで、外気が極度に乾燥しても結合水は蒸発しないため、肌内部の潤いが守られていたのです。

img_ceramide04_03

重要なのは、乾燥に抵抗するセラミドの働きを高めること。

もともと角層には、セラミドが存在することにより乾燥に抵抗して水分の蒸発を防ぐ働きがあります。皮膚の最も表面の0.02ミリというごく薄い角層が外の乾燥や刺激から肌そのものを守っています。

その証明として、角層は皮膚から切り離して湿度の低い場所に置いても簡単には乾燥することはありません。天然ポリマーであるコラーゲンやヒアルロン酸を同じような乾燥下に置いておくと簡単にパリパリになるのに、です。これは、角層に存在するセラミドの乾燥下での高い保湿力(水分保持力)を表していると言えるでしょう。

その後の研究においても、セラミドは高い角層水分保持の機能の他にも角層細胞同士をつないで、外からの物理的刺激に抵抗し、また刺激物の吸収を防ぎ、角層の下にある表皮や真皮からの水分の蒸散を防ぐバリア機能を備えていることがわかっています。

保湿においては、外から水分そのものを与えることも大切ですが、水分を自由水ではなく結合水として与えないと、乾燥下では保湿効果はほとんど期待できません。より重要なのは、肌本来の乾燥に抵抗するセラミドの量や働きを高め肌内部にしっかりと蒸発しない水分(結合水)を抱え込むこと。セラミドの潤い機能を高めるお手入れ習慣が潤い肌の維持に欠かせないと言えます。

img_ceramide04_04

まとめ

偶然起こった出来事を見逃さず、始まった研究から、水分保持機能に重要な因子としての発見に至った角層細胞間脂質セラミド。今では、潤い補給の必須成分として化粧品などスキンケア製品や、飲む機能性表示食品などに配合され、私たちの美肌ケアに活かされています。

次のページ

5.乾燥による肌へのダメージ